1.ショー材料が十分加熱されていなかったり、射出圧力が低過ぎたりして、金型内に材料が完全に充填れていないまま固化する現象である。
(1)
成形機の射出能力に比べ、キャビティ容積が大きすぎ可塑能力以上の成形品は十分にキャビティに充填することができないので、ショートショットになる。
この場合のショートショットは、ある期間成形機を運転し、材料および金型の温度が十分上昇した後でも生じるもので、一時的に発生し時間の経過と共に発生しなくなる性質のものではない。
この対策としては多数個取りの場合には、1個あるいはそれ以上のキャビティをふさいで他のキャビティに材料が十分充填できるようにする。1個取りならば、さらに可塑化能力の大きい成形機を使用しなければならない。
(2)
ノズルが冷えている場合、ノズル温度の上がるまで幾ショットか冷えた材料が射出されるのでスプルーあるいはランナー部分で固化してしまう。
成形作業開始時には、ノズルは金型に接蝕して温度が低下するのでこの傾向がある。
成形を短時間中止したときにはエアーショットを行い、ノズル部の冷えた材料を排出しなければならない。
排出した材料は変色程度によってスクラップとして再生したり、放棄したりすればよい。ノズルにヒーターが装備されているものは保温に必要な温度に調整しておけば問題はない。
ノズル孔径が小さいか、ノズル部で着色剤分散装置などによる圧力低下が著しい場合もショートショットになるので、孔径の大きめのノズルを用いるか、着色剤分散装置の材料通路を広げなくてはならない。
(3)
ランナーやゲートが小さすぎる場合には、温度および圧力をいかに調節してもショートショットになることがある。
ほとんどの金型設計者は経験で許される限り小さくする傾向がある。
それで試作の結果を見て、グラインダーなどでゲートやランナーを広げたり、深くしたりしなければならないことがよくある。
このような場合、流れを効果的にし、抵抗を少なくするためにランナーは磨き直し、できるだけ平滑にしておかなければならない。
ランナーの過小は流れの摩擦抵抗が大きくなるだけでなく、射出時間が長くなるので材料の固化をも早める結果になる。
射出速度の速いスクリューまたはプランジャーを有する成形機では、ランナーの大きさが十分でさえあれば、小さいピンポイントゲ−トでも何ら問題ほない。
(4)
キャビティが大きすぎたり、ランナーが小さすぎたりしてなければ、キャビティに十分充填できるように材料温度あるいは射出圧力を調節する。
射出圧力を最大にし、満足できる成形品が得られるまで温度を上げる。
もちろん温度を上げすぎると材料が焼けたり、その他成形品にいろいろな欠点を生ずる原因となるので注意を要する。
(5)
キャビティ内で材料の流動距離が長かったりあるいは成形品に薄肉の部分があると、材料が冷えて十分充填されるまでに固化してしまう。
冷えた材料の溜り場所を適当な個所に設けて、キャビティ内に十分加熱された材料が充填するようにするとよい。
図1・1は過冷材の溜り場所を設けた一例である。
ランナーの方向が急激に変るような個所や主ランナーの末端に溜りを設けるのも効果がある(図1・2、図1・3)。トショット(充填不足)
(6)
金型温度を高くすると、キャビティ内を流動してゆく材料の粘度が低く保てるので、充填状態がよくなる。
この場合、成形品の冷却時間が長くなるので、生産状況を勘案して適温を定める必要がある。
(7)
材料温度の低すぎあるいは射出速度が遅い場合、材料がキャビティ内に十分充填される前に固化してしまい、ショートショットとなる。
(8)
材料供給量が成形機能力に比べ小さすぎる場合には、充填量が少くなるので、ショートショットを起こす。
(9)
キャビティ内の空気が射出期間中に逃げ出せないと、残留空気圧のためにショートショットを起こしたり、焼けを生じたりする。
空気が逃げ出すのに十分な時間があるように、射出速度を遅くしたり、あるいは滞留空気のできないように排気部を設けたり、ゲートの位置を変更したり、成形品の肉厚を変えたりする必要がある
(10)
射出圧力が低くすぎると、ランナーやゲートなど圧力低下があるので、キャビティ内に十分圧力が伝わらず、ショートショットになる。この場合には射出圧力を上げるとよい。
1.ショートショット(充填不足)2.ば り3.成形品面の“ひけ”4.気 泡5.フローマーク(波紋)6.シルバーストリーク(銀条)7.表面のくもり8.ウェルドライン(融合線)9.ブラックストリーク(黒条)および焼け10.クレイジング11.ジェッティング12.反りおよび変形13.成形品の離型不良14.スプルーの離型不良および切断15.材料の食込み不良16.その他の不良
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